同僚にカモられそうになった話から、マルチ商法の手口について考える

なつめです。
わたしは昔から知らない人に声をかけられやすい体質のようです。
道を聞かれる。行楽地のガードマンが仕事をサボって紅葉の穴場スポットに案内してくれる。通りすがりに「祈らせてください」と声をかけられる。
ボーッとしているように見えて、近づきやすいんでしょうか?でもそれで危ない目にあった事は意外とありません。
本当に危ないのは、知らない人ではなく、身近な人なのです!
……と思った体験を思い出したので書きたいと思います。

まず対象者Aさんについてですが、当時32歳の独身女性。彼氏なし。同じ事務所内で仕事をする、別事業所の責任者で、大学卒業後から10年間今の職場一筋で働いていました。定時になるとみんなが帰っていく中、私と彼女だけは仕事が終わらずよく残業していて、話す機会も割とありました。
プライベートで仲良しという感じではありませんでしたが、一度だけ別の同僚(わたしは顔見知り程度)を交えて3人でのランチに誘われ、その時にLINEは交換していました。

ある日の夜。いつものように隣りのデスクで残業していると、彼女から「来月末で仕事を辞める事にした」と報告が。話を聞いていると、次の仕事は決まっていないようでした。しばらくはお休みして、興味のあった美容のスクールに行って自分のために時間を使いたいと話していました。
その一ヶ月後、仕事がもうすぐ終わろうかという時間に
「今日ご飯食べに行かない?」
と誘われました。
Aさんが辞める日も迫っていたし、送別の意味も兼ねて承諾し、職場からそれぞれの車でお店に現地集合する事になりました。
ここから悪夢のような時が始まるとはこの時は思いもしませんでした。

予期せぬ刺客登場

現地に着いた時から既に違和感はありました。
駐車場に車を停めて見ると、Aさんは既に到着していて、店の前で待ってくれていましたが、
(あれ……?2人?)
そう、待っていたのはAさんだけではなかったのです。
わたしはAさんと2人で食事するつもりだったので少し驚きましたが、すぐに「他の人も誘っていたのね」と納得しました。

一緒に待っていたBさんの顔には見覚えがありました。数ヶ月間、同じ建物内にあるまた別事業所で働いていた事があったからです。
40前後の女性で、日に焼けた肌に濃いメイク、無造作に束ねた明るい色の髪。スタイルが良くて、夏場はノースリーブのミニワンピースに10cmくらいのヒールを履いて出勤しているような人で、同職には無いエロさで目を引いていました。
接点はほとんどないので、本来なら話をするような関係ではないのですが、私のこの性格なので、ロッカールームで会った時に何度か世間話はした事がありました。
噂好きの女性達が、離婚してシングルマザーになったとか、前は夜の仕事をしていたとか言っていた気がしますが、聞き流していたのでよく分かりません。
とは言え、名字を辛うじて知っているようなそんな間柄でした。

車を降りるとAさんが、開口一番、
「ごめぇん。Bさんも呼んだってそう言えばなつめさんに言ってなかったかなぁって思ってぇ」
私は友達の友達と遊ぶのに抵抗がないタイプで、基本的に2人で密に付き合うよりは、みんなでワイワイ楽しむ方が好きなので、むしろBさんの登場は歓迎でした。
「こちら前に〇〇の事業所に務めていたBさん。私の師匠です」
師匠という呼び名の違和感に、この時気付くべきでした。
このBさん(以下師匠と呼びます)かなりの曲者でした。

軟禁タイム(食事会??)

食事をしたのは気軽に入れる雰囲気のイタリア料理のお店でした。前菜はビュッフェスタイルになっていて、その時点でわたしには、美味しいものを食べる事へのワクワク感しかありませんでした。
最初は仕事の話や、世間話をしていましたが、
「なつめさんの働いている事業所って、‟出る”よね」
師匠がそう言い出した所から、だんだんと雲行きが怪しくなっていきます。
Bさんはいわゆる「見える」人だそうで、亡くなった人の霊や、その人のオーラみたいなのが分かるそうです。
「心根が悪い人とは気分が悪くなってこんな風に一緒に食事出来ないこともあるけど、なつめさんはすごく気持ちの良い感じがする。絶対いい人だわ」
「そうなんですよぉ。なつめさんって人の良い所を捜してくれて、あたしの事いっつも褒めてくれるんですよぉ」
甘ったるい声でAさんが応じ、褒めちぎられました。
普通なら嬉しいところなのでしょうが、なぜだかわたしの胸はザワザワしていました。

一通り褒め褒めタイムが終わった頃でAさんがiPadを取り出しました。
「この前師匠と美容のセミナー行ってきた時の写真、見て見てぇ。あ、師匠って私の美容の勉強教えて貰ってるから師匠ね」
ここで呼び名の意味が明らかに。
私は職場でのあだ名だと思っていましたが、普通に考えて10年務めてる人が、数ヶ月間務めただけの人を師匠呼びっておかしいですよね。

見せられた写真はセミナー、というよりは、旅行先のホテルに見えるような写真ばかりでした。
「この食事、500円で食べられるんよぉ。すごく豪華じゃない?」
「朝まで無料でカラオケ歌い放題でぇ楽しかったぁ!」
「この人社長で、50歳くらいなんだけど、超美魔女じゃない?」
そんな話が続き、正直興味を失っていた私は愛想笑いと適当な相槌をうっていました。
すると、
「あっ!友達とかも全然さそっていいらしいから、今度なつめさんも一緒にいこいこ!」
ここらから、ようやくなつめの警戒センサーが働き始めます。(遅い)
「ね、師匠!なつめさんも行ってもいいですよね」
「うん。普通に美容の勉強してない人もたくさん来るし、いいよ!」
「やったね!なつめさん!」
私が一言も発しないうちにあれよあれよと話がまとまっていきます。
そして長い長い夜はこれで終わりではありませんでした。

食事も終わり、そろそろ帰りたいなと思いはじめた頃。
おもむろにAさんが話し始めました。
「美容の勉強で、毎回いついつまでにこの課題をしてきなさいってのがあって、その締切が明日なんだけど、今回の課題の美容カウンセリングとハンドマッサージがあと1人残ってて……。なつめさん協力してほしいの」
少し面倒くさくはありましたが、期限も迫っているようだったので、それくらいならと了承すると、
「やったぁ!」 いつもの調子に戻ったAさんが書類を取り出し、それを読み上げながら、個人情報の記入と美容に関するアンケートへの記入を求めて来ました。
正直、記入には抵抗がありましたが、とても断れる雰囲気ではなく大人しく記入。
美容に関するアンケートは、生活習慣や、肌のことで気になる事などを記入するものだったと思います。
記入し終わってその用紙をAさんに渡すと、
「失礼しますね」
と言って30センチ程の距離に顔を近づけてきました。
近い近い近い近い!!
「うーん。ニキビはありませんね……毛穴の開きが気になる、にチェックが入ってますけど、キメも細かい方だと思います」
そんな事を一つ一つチェックされながら、1日仕事した後の疲れた顔を至近距離で見つめられ、心折れそうになっていました。
「師匠これでいいですか?」
一通り記入し終わった書類を師匠に見せるAさん。
すると、師匠が
「なつめさんは敏感肌で、乾燥しやすいから放っとくとシワが出来やすいよ!」 とか
「頬の辺りにカンパンと呼ばれるシミができ始めているから、今のうちに何とかしないと大変な事になるよ」
などと不安を煽るような発言をしてきます。
そして
「大丈夫!Aちゃんも勉強始める前は何もしてなくてお肌酷い状態だったけど、気を遣うようになってから随分良くなったよね!」
「師匠のおかげですぅ。師匠ってホント綺麗で憧れるよね、なつめさん」
そんな会話が繰り広げられていくのをわたしは冷えた気持ちで聞いていました。
確かに、師匠は細くてスタイルがいいし、同年代の他の女性には無い色気があり、モテるタイプだと思います。
ただ冷静に観察してみて、パサついて根元が黒くなった茶髪や、アイラインで真っ黒になった目元、いつも疲れているようなくすんだ茶色の肌は、私の思う健康的な美しさのイメージとはかけ離れていました。
もうこの頃には愛想笑いも出来ない程疲れていました。

羞恥心と疲労との闘い

「じゃぁなつめさんハンドマッサージするね?」
「え?!ここでですか?」
食事の終わったテーブルの上に何やら化粧品のようなものや、器具を取り出し始めるAさん。
まさかのレストラン内でマッサージが始まってしまったのです。
恥ずかしさと疲れたのとで早く帰りたいという心理。思えばこれも相手の作戦のうちだったのでしょうか。
周りのテーブルで他のお客さんが食事を楽しむ中、ハンドマッサージが始まりました。
それでも、あくまでも私は「お客さん」ではなく「練習台」なのだからと高を括っていました。でもそこがうまい手口だった!!
施術しながら化粧品の説明を始めるAさん。
それに対して師匠が
「そうじゃなくて、お客様にはこういう風に説明しないと」
いかにこの化粧品が素晴らしく、美しさにつながるのかをとうとうと語り始める。
そしてそれを復唱するAさん。
普通ここまでしつこく化粧品を勧められたら、「いらないです」と断れそうなものですが、あくまでわたしは「練習台」。その勧誘も私に対してではなく、今後接客する際のお客さんへの説明の練習という体なので、わたしには断る術がないのです。
化粧品が浸透するという謎の電気器具でマッサージが始まったころには既に白目を剥いていました。

「次回の課題はエステだから協力してほしい」
Aさんが言うと、
「もちろんAちゃんは勉強中の身だから施術は無料だよ。ただ使用した化粧品の実費だけは負担してあげて?そうしないとAちゃんも大変だからさ。ううん、大した額じゃないから大丈夫」
師匠がたたみかけます。
Aさん自身が「練習台になって。でも化粧品代は負担してね」というとただの嫌なやつですが、そこを師匠が言ってくることで「それなら仕方ないか……」という心理になっている自分に気付きました。絶妙な役割分担。

結局、ようやく解放されたのは五時間後のことでした……。

長時間の拘束により途中からは「なんでもいいから早く帰りたい」という気持ちになり、なんにでも「はい」言ってしまっていました。もうちょっとで洗脳されていたかもしれません。

後日、職場で化粧品のサンプルをもらったり、いつエステに協力してもらえるか聞かれたりしましたが、すっかり洗脳が解けた私は、適当にごまかしながら、極力みんながいる別の事務所で仕事をするようにし、Aさんの退職まで逃げ回りました。
なので、残念ながらその後面白いことは何も起こっていません。
しかし、同じようにエステに協力してといわれて、美容の勉強をしている場所に連れていかれた同僚は、高い化粧品を買わされ、その後他の人に勧める側にならないかと誘われたそうです。

後日談

辞めてからしばらくは、Aさんから食事の誘いなどが来ていたのですが、断り続けていたら、連絡が来ることもなくなりました。
ただ時々LINEのタイムラインに
「フットネイルしてもらった。これで1000円とか安い!やってもらいたい人紹介するよ♡」
みたいな投稿をしていて、それに
「かわいいし安い!私もしてもらいた~い。どこでしてもらったの?」
なんてコメントがついていると、
だまされるなーーーーー!!!逃げてぇぇぇぇぇぇ!!!という気持ちになります。
うまい話には裏がある…かもしれません。皆さんもお気を付けください。

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まとめ
〇複数人で役割分担して勧誘してくる奴らに気を付けろ!
〇褒めと脅しに気を付けろ!
〇無料と言いながら金銭が発生する事態に気を付けろ!
〇長時間の拘束で判断力を鈍らせてくる手法に気を付けろ!

ひえっ…典型的なABC商法…!こんな露骨な方法で勧誘するんですね…。断りづらい、絶妙な人間関係で、こういう勧誘してくるのって、本当に迷惑ですよね。特に、最初から勧誘目当てで仲良くなってくる人とか、対人関係上の裏切りだと思っています…。なつめさんが無事に解放されてよかった!

次回予告
12月14日(水)はトフィーによる小ネタ更新です!

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