守り神

「ぎゃー!!」
私のシルエットを認め、あの子が甲高い叫び声をあげた。
窓ガラス一枚を隔てて、実際に姿は見えなかったが、その真ん丸に見開かれた目、驚いた時や怖い時に寄る鼻の皺の形は、まだ鮮明に思い浮かべる事ができる。その顔を私はよく知っている。

生前に良い行いをすれば、花の咲き乱れる綿菓子のような場所で楽しく過ごせると思っていたが、どうやらそれは生きている人間の勝手な願望だったようだ。わたしはまだこうしてここに居るのだから。

それが良い事なのか、悪い事なのかは分からない。しかし、「神様」と生きていた時に呼んでいた存在が、 こう問いかけてくれた事は私にとって救いであった。
「さあ、次は何になりたい?」

私は少し考えてから返事をした。
それを聞いて驚いて顔を上げた様子を見ると、神様は人の考えなどお見通しなのかと思ったらそうでもないらしい。

「なぜ。もっと理知あるものを望む者達は大勢居るのに」
「今から人に生まれていては、あの子にとても追いつけません」
私が答えると、一度はなるほどという顔をした神様だが、それでも尚食い下がる。
「ではなぜ。あの子の最も嫌いな生き物を選ぶ。他の生き物になって共に歩むという選択肢もあるだろうに」
「どこの世界に飼い主の世話を焼くペットがありましょう。それにこの姿であれば、あの子がどんな高い場所へ住んだとしてもそっと見守る事が出来ます」

私がそう答えると、神様は私の目の奥をじっと窺った。
「よろしい。望みどおりにしよう」
そう言ってにっこり微笑んで、キーボードを叩く。全知全能の神様はその完全な記憶力で全ての人間の行く末を覚えているのかと思ったら、どうやらこちらの世界でもコンピューターでの管理が進んでいるらしい。
こうしてわたしは望みの姿に形を変えた。

しばらくしてあの子は一人暮らしを始めた。新居はアパートの2階だったが、この吸盤によく似た、ひだを持つ四つの足をもってすればなんて事はない。今日も窓ガラスに張り付いてあの子を見守る。

突然の雨が振り出せば、ケロケロと蛙の鳴き真似をして知らせる。おかげで、何とか洗濯物を濡らさずに済んだようだ。
連日の深酒が過ぎる時には、出かけようとするあの子の前をすっと横切ってみせる。おかげで、今日は近くの焼き鳥屋に飲みに行くのをやめたようだ。

誤算だったのは、そのせいであの子を眠れないほど怖がらせてしまった事である。本当は隠れて見守るつもりだったのに、心配のあまりつい過保護になってしまうは昔から私の悪い癖だ。
肩を竦めて(と言っても私にはもう竦める事の出来る肩が無いのだが)反省した私は、今日のところは自分の寝床へと退散する。
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「家を守る」などと大層な名前をつけたのは、どうやら生きている人間の勝手な願望だったようだ。
わたしは家ではなく、今日もあの子を守っている。

 

なつめです。
この話は、トフィーさんが連日「“アレ”嫌い」ツイートをしていた時期に、トフィーさんにホッコリしてもらって、少しでも“アレ”を好きになって貰えたら……という思いで書きました。なのに、当の本人は……「これは笑うwwwwww」
私としてはあれ?あれ?なんで?ホッコリは?感動は?って感じなのです。
この話は本来ブログアップ用ではなかったんですが、トフィーさんとこの話をしていて、じゃあどっちの感覚が正しいのかみんなに見てもらおうじゃないの!となりまして。えぇ。
なので、今回はtwitterの方で積極的に感想求めていくウザいスタイルで行きますが、ご協力お願いします(笑)

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